2019年6月30日 公開

夏休みのセミとりは知育の宝庫。楽しみ方と観察のポイント

夏になると、聞こえるセミの声。子どもは飽きもせず、セミをとろうと虫網を振り回して夢中で遊びます。付き合う親は大変ですが、セミとりの楽しみ方や広げ方によっては、子どもの好奇心や探究心を育てるきっかけになります。わが家で行っている、セミを通した知育活動をご紹介します。

子どもは、セミとりから研究心を学ぶ

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セミの鳴き声がうるさい日本の夏。毎日本当に暑く、大人はセミを追いかけまわす子どもに付き合うのは、正直大変です。しかも子どもは、セミとりにでかけると「捕れた、捕れなかった」で一喜一憂。収穫ゼロだとなんとも残念な気分になりますよね。

親にとっては面白さの見出せないセミとりですが、子どもはそれとは裏腹に、対象物であるセミにどんどん探求心が湧くようです。筆者の息子たちは、ちょっとした声掛けでたちまちセミ博士になりました。セミとりから学んだ知育方法をご紹介します。

まずはセミに触って観察!種類や性別の確認も

右がオス、左がメスのアブラゼミです。
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セミを捕まえたら、アブラゼミ、ミンミンゼミなのか、まずはセミの種類を見分けます。次に、オスかメスかの観察をはじめましょう。鳴くのがオス、鳴かないのがメスですね。オスには鳴くための器官(腹弁)がお腹についています。

続いて、足の本数や羽の枚数を調べましょう。上羽と下羽のサイズが違います。口からのびる管も見てみると面白いですよ。「セミの目はどこにあるんだろうね?」と、少し子どもにヒントを与えるだけで、「〇〇セミは〇〇色だったけど、これは違う~」と、子どもたちからもいろいろ感想が出てきます。

セミの種類は時期や地域によっても違うのが、とても興味深いところ。図鑑の力を借りて、セミの世界を広げてみるのも楽しい時間です。

セミの抜け殻を集めて、羽化の痕跡を知ろう

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まだセミに触れないお子さま、もしくはパパママがセミ嫌い、またはセミとりに収穫がなかった日は、セミの抜け殻を集めてみてはいかがでしょうか。小さいお子さまは目線が低くので、探し上手なこともあります。親子でどちらがたくさん見つけられるか競争しても盛り上がりますよ。

ギュッと触ると壊れてしまう独特の触感も面白いですし、背中の割れ目の秘密(羽化の跡)に気が付くお子さまもいるかもしれませんね。

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「セミは木や葉っぱに、どんな風につかまっているかな?どんな位置に抜け殻はたくさんいるかな?」と声がけして、子どもと一緒に探すだけでも、立派な観察になります。

抜け殻は網で落とそうとしても、手で葉っぱから引き離そうとしても、なかなか離れないことがあります。羽化の際の足場としてギュッとつかまっていたんだなと思うと、その抜け殻のストーリーまで感じられる気がしました。

右がミンミンゼミ、左がニイニイゼミです。ニイニイゼには、なかなかお目にかかれないのですが、泥をかぶっているので、すぐ分かりました。
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抜け殻によるセミ種類の判別も行ってみました。虫メガネを抜け殻にかざして足の関節を観察。アブラゼミとミンミンゼミの見比べはとても難しく、ヒグラシやニイニイゼミの判別は分かりやすいです。

慣れてくると、オスメスの判別も見分けられるようになります。産卵管の跡があるのがメス、お腹の上に腹弁があるのがオスですね。

地面をよく見て!セミの幼虫の穴探し

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地面を見ると、穴ぼこがたくさん開いています。これは、セミの幼虫が地中から穴を掘って出てきた跡なのです。試しに抜け殻をこの穴に入れてみると、ぴったりでした。

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この穴はどのくらい深いのか、近くに落ちていたイチョウの葉っぱを差し込んでみると、すっと全部入ってしまいました。

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それならと、今度はシャベル持参で公園に行った息子たち。穴をずーっと奥まで掘ってみると、そこには木の根っこが。セミの幼虫は、地中で木の根っこを吸って栄養分を摂取しているので、納得ですね。木からかなり離れている場所を掘っても、木の根がしっかり張っている点は新たな発見でした。

シャベルを使って掘っても、土はかなり固いです。この土をあの小さな身体で掘りながら出てきたと思うと、抜け殻で見た「ぶっとい前足」の役割も見えてきた気がしました。

おうちで幼虫の羽化を観察する方法

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息子はセミへの好奇心が極まり、「羽化が見たい」と言い出しました。自然界において、セミの羽化に立ち会うのはとても貴重だといわれています。親子で知恵をしぼった結果、セミの幼虫が穴から這い出て、木に登るところを探すことにしました。

穴のあった場所に夜7時ごろ行くと、登る木を探して歩いている幼虫を発見しました。ちなみに5回行って3回、成功しています。

幼虫の動く姿に親子で感動。このまま観察できればベストですが、外は暗く蚊に刺されるため、セミに極力触らないようにして自宅に持ち帰り、観察することにしました。

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網戸やカーテンなど、セミの幼虫がつかまりやすい場所にそっと置いたら、あとは幼虫のタイミングを待ちましょう。幼虫が歩き回って場所を決めたら、羽化がはじまります。

羽化は、30分ほどではじまることもあれば、いつまで経ってもはじまらないこともありました。羽化の所要時間は2時間程度なのですが、最初知らず、はじまる前にお風呂に入ったり寝る準備をしていたりしたら、羽化が終わっており、観察を逃した失敗もあります。

羽化の最中は、本当にデリケートなセミ。決して触わらず、過度な光や騒がしさを避けることが重要です。羽化を見届けたら翌朝まで置いておいても大丈夫。朝には羽が乾き、色づいたセミとご対面します。抜け殻から離れて歩いているところをつかんで外に逃がしてあげれば、おしまいです。

自宅に持ち帰ったら飼う?死んでしまったらどうする?

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最後に、わが家のセミ捕りルールをお伝えします。セミの種類にもよりますが、約5年の期間を地中で過ごし、地上に出てからは約1カ月と短い命のセミ。息子がちょうど5歳のときにそのことを伝えて以来、セミの地上での生活はなんて貴重なのだと子ども自身も理解してくれました。

わが家ではセミを自宅に持ち帰ったらすぐに、自宅の壁や地面に貼り付けて、逃がすことを決まりにしています。「ちょっとの間、一緒に遊んでくれてありがとう」という感謝の気持ちを添えて、外に逃がします。

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それでも何かのアクシデントや不注意で死なせてしまった場合は、セミのお墓を作ったり、デッサンをしたりするようにしています。上の写真は、死んでしまったカブトムシと一緒に絵を描きました。関節ごとに足がこんな風になっているのかなど、詳細に観察することで、はじめて気が付く昆虫たちの特徴もありました。

セミの観察は知の宝庫!夏はセミとりを楽しもう

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少しマニアックなセミ観察だったかもしれませんが、セミという生き物を通して、いろいろな知の冒険ができることを感じていただけたらうれしいです。

ちなみに今でこそ、セミを入り口にいろいろな楽しみを見出せるようになったわが家ですが、3年前の長男は触ることすら怖くて「ママつかまえてぇ~」と逃げ腰でした。年月を経て自分でとれるようになった息子は、セミの疑問を自分で意欲的に調べ、今では立派なセミ博士になれました。

長い目で子どもの成長を感じるのも、定点観測できる季節行事ならではです。今年の夏は、セミとりをもっと多角的に楽しんでみませんか。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

福岡すみれ 福岡すみれ  東京都在住、3人のやんちゃな男の子のママです。外遊びが大好きな息子たちと日々いろいろな公園を巡りつつ、3度の食事(とおやつとお酒)を何よりも楽しみに過ごしています。