2017年2月11日 公開

原産地メキシコからチョコレートの原材料、カカオの歴史を学ぼう

あまり知られていないかもしれませんが、メキシコはチョコレートの原材料・カカオの原産国。チョコレートだけじゃない、メキシコのカカオを使った食べ物「モーレ」や飲み物もあわせて、その歴史と習慣をご紹介します。

カカオの歴史

Alesia Bilkei / Shutterstock.com
カカオを初めて発見したのは、紀元前1,200年~400年ごろ。オルメカ文明の人たちだといわれています。オルメカ文明とは、現在のメキシコ湾岸を中心に栄えたメソアメリカ文明のこと。かつてオルメカ文明の支配下にあった地域は、現在のベラクルス州からタバスコ州あたりと考えられています。

ちなみに現在のタバスコ州ではそれを記念し、毎年11月にチョコレートフェスティバルが行われ、現存するカカオ荘園でチョコレート製造の過程を見学することもできます。

タバスコ州の第一回チョコレートフェスティバルにて。カカオ荘園での作業の様子を会場で再現しています。
via Photo by Mie.S

カカオドリンク「ポソル」と「テハテ」

タバスコ州のカカオ荘園で、伝統的な衣装を着て見学客のためにヒカラでポソルをくみ、注いでいる様子。
via Photo by Mie.S
カカオはまず砕いて粉末にし、水などで溶いて作った貴重な飲みものとして広まっていきました。

現在でも、タバスコ州では「ポソル」、オアハカ州では「テハテ」と呼ばれるプレヒスパニック時代からのやり方で作られたカカオドリンクを飲むことができます。ポソルやテハテは、カカオとトウモロコシの粉を混ぜた冷たい飲み物。甘さは控えめですが、暑い気候にはぴったり。ヒカラと呼ばれる木の実の殻で作った器で飲みます。

皇帝も愛したカカオ

denio109 / Shutterstock.com
16世紀ごろ、メキシコを支配していたアステカの皇帝だったモクテスマは、当時貴重品だったカカオにトウガラシなどのスパイスを加えた滋養強壮バツグンの飲み物を日常的に飲んでいたそう。その量、実に日に50杯というから驚きです。

アステカを征服したスペイン人、エルナン・コルテスはのちに、スペインに宛てた手紙の中で「このアステカの飲み物を1杯飲めば、兵士は1日中行軍することができる」とその効果に言及していました。

現在のメキシコでも「チョコラテ」と呼ばれています。いわゆるホット・チョコレートとして老若男女に愛される飲み物で、スーパーでも固形や粉末タイプが売られており、お湯や牛乳で溶かして子どもたちも夜の軽食のお供に飲みます。モリニージョという専用のかき交ぜ棒で混ぜるのが伝統的な作り方。

貨幣としてのカカオ

AGCuesta / Shutterstock.com
皇帝や特権階級のみ味わうことができ、神への捧げものにも使われたカカオですが、その価値から貨幣としても使われていたといわれています。例えば、カカオ豆3粒なら七面鳥のタマゴと同等の価値。100粒なら野ウサギ、といったような具合です。

いつからカカオは甘くなった?

via Photo by Mie.S
スペイン人のアステカ征服以降、ヨーロッパに渡ったカカオはそこで初めて砂糖が加えられ、温かくして飲まれるようになりました。私たち日本人が持つ「カカオ=甘いチョコレート」というイメージは、16世紀のヨーロッパで生まれたスタイルが原型なのです。

もちろん、今ではメキシコでも甘いチョコレートは一般的。「Turin」という大手メーカーのテキーラ入りチョコレートボンボンは、メジャーな定番お土産でもあります。

カカオを使った郷土料理「モーレ」

Esdelval / Shutterstock.com
カカオは、抗酸化作用があるというポリフェノールの他に、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラル分や食物繊維も含まれています。

メキシコのカカオを使った郷土料理といえば「モーレ」。これはカカオとトウガラシ、その他香辛料を混ぜて作った濃厚ソースのことで、ゆでた鶏肉にからめていただくのが一般的。

残念ながらチョコレート味はしません!先日、某バラエティ番組の「2017年に流行る、日本ほぼ未上陸の各国料理」の第3位に選ばれていた、という友人からのレポートを聞きましたが、日本で流行の際にはぜひお試しください!
商品名:世界遺産になった食文化〈4〉マヤ文明から伝わるメキシコ料理
著者 :服部 津貴子(監修)、こどもくらぶ(編集)
出版社:WAVE出版

お子さんでもわかりやすいように、メキシコ料理や食材など丁寧にカラフルな写真入りで解説しています。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう

3分でわかる知育マガジン「Chiik!」

RECOMMEND この記事を読んだあなたにオススメ

美食の国フランス高級チョコ「ヴァローナ」の博物館で学んだこと

美食の国フランス高級チョコ「ヴァローナ」の博物館で学んだこと

スイーツ大国フランスの高級チョコレート「ヴァローナ(Valrhona)」。フランス・ローヌ地方にはヴァローナのチョコレート博物館があり、 スイーツについて...
世界の食文化を知る食育!メキシコの歴史あるタマレスと冬の行事

世界の食文化を知る食育!メキシコの歴史あるタマレスと冬の行事

和食よりも早くユネスコの世界無形文化遺産に指定され、4,000種類以上のバリエーションがあるメキシコ料理。日本ではタコスやブリトーが知られていますが、今回...
年末年始のお休みに!マシュマロの簡単おやつをつくろう♪

年末年始のお休みに!マシュマロの簡単おやつをつくろう♪

ふわふわで甘くて、とろける「マシュマロ」。子どもも大好きなお菓子ですね。そんなマシュマロは意外にも、栄養や美容に効果的な成分も豊富で、ヨーロッパでは医療現...
子どものやることに失敗はない!料理で失敗を発見や成功体験に導く

子どものやることに失敗はない!料理で失敗を発見や成功体験に導く

失敗が怖い、間違えたら恥ずかしい。そんな気持ちは誰しも持っています。失敗や間違いをそれで終わりにせず、発見や成功につなげられれば「やってみよう!」という気...
うんこ好きを知育に徹底活用!生き物の生態に詳しくなろう

うんこ好きを知育に徹底活用!生き物の生態に詳しくなろう

汚い言葉をあえて言っては面白がるブームが息子達に到来。なかでも、お気に入りは「うんこ」!! そんなに好きなら知育にしちゃえ!と立ち上がった筆者が選んだもの...

KEYWORDS

WRITER

Mariposa Torres Mariposa Torres  メキシコシティ在住9年目。メキシコ人の夫、娘、2匹の猫と一緒に暮らしています。現地日本語・スペイン語フリーペーパーの編集長を経て、現在は企業勤めのかたわら、フリーライター。タコスやテキーラ、太陽サンサン…でも世界でもっとも危険な国!?というメキシコのステレオタイプなイメージを変える、そんな楽しい現地レポートをお届けします。