2016年6月20日 公開

【夏至】北半球で最も昼の長い日は、太陽の恵みに感謝してみよう

地球の自転軸は公転面と直交していないので、一年の間、同じ時刻でも太陽が高く見えたり低く見えたりします。その最も高く上がる日を夏至(げし)、それからの約15日間を含めた期間も夏至と言います。毎年の6月21日から7月6日ごろの期間です。

移り変わる自然を観る―ゆたかな心

中国で作られた二十四節気は一年を二十四等分したもので、夏至もその一つ。

一年の中で太陽の光に最も恵まれる季節ですが、日本ではまだ梅雨の最中であることがほとんど。中国で作られた暦も我が国には合わないものが多いのです。

中国では立春の次候(中頃の五日間ほど)に「冬ごもりの虫が動き始める」と言われますが、同じ時節を日本では「鴬が山里で鳴き始める」と言います。

常に移ろう季節は人間の生活に身近なものですが、とりわけ多感な子どもの感受性や精神性にも大きな影響を及ぼします。

探ってみよう―生き物の心と言葉

夏至の頃に咲く花と言えば花菖蒲や紫陽花(あじさい)が有名です。

紫陽花は酸性土壌の我が国では青紫に色づくことが多く、梅雨空の下で独特の風情を醸し出します。「アジサイ」の語源は「集まる」の「アツ」と「真藍(サアヰ、サヰ)」の「アヅサヰ」ではないか、とも言われます。

アジサイは可愛い花びら(萼)が寄り集まっているところから、日本ではその花言葉を「楽しい家族の集まり」とすることもあります。

紫陽花を観ながら、親子などで花の名前の由来、花言葉、その心などを話し合って見るのも楽しいはず。きっとお子さまの想像力や探究心も膨らむでしょう。

疲れのたまる時節―夏至を乗り越える知恵

夏至の頃、日本の空には低温多湿のオホーツク海気団と高温多湿の小笠原気団がせめぎ合っていることが多いでしょう。天気はぐずつき、寒暖差が大きく、心身ともに疲れが溜まる頃。

そこで古来から夏至を乗り越えるための行事や食物が用意されてきました。愛知県ではイチジクの田楽を食べる習慣があります。イチジクは不老長寿の果実とも言われ、ビタミンB群・ミネラルの補給や整腸剤に用いられ、最近では抗酸化作用等にも注目されています。

また関西ではタコを食べ、関東では焼き餅を食べたり。昔からの風習とその理由を考えてみるのも、楽しい学習の第一歩です。

野山を歩き、自然を観察してみる

二十四節気のそれぞれを初候・次候・末候に三分したものを七十二候と言います。

夏至の初候は「夏枯草が枯れる」、次候は「アヤメ(花菖蒲)の花が咲く」、末候は「烏柄杓(からすびしゃく)が生える」と言われます。

夏枯草(かごそう)はウツボグサとも言われ、花穂が半ば枯れる夏至の頃に採取し、薬として用います。

烏柄杓は外来種の雑草で、浦島草や蝮草に似ています。世の中に一つとして同じ草はありませんが、それでも共通点を持った仲間がいます。

どこが同じでどこが違うか……分類と異同を考えるのも、ものの見方、観察法の一つです。

日々に移ろい、まためぐり来る自然

タイトル:はじめてふれる 日本の二十四節気・七十二侯
著者  :文 根本浩,絵 小林絵里子
出版社 :汐文社

二十四節気や七十二候については、『はじめてふれる 日本の二十四節気・七十二侯(全4巻)』に詳しく書いてあります。

著者はメディアに講師として出演したこともあり、日本の四季の移ろいについて分かりやすく解説しています。

人の力を遥かに超える自然

日本の虫の音を愛でる文化は世界でも珍しいと言われます。私たちが過ごしている環境は、身近なものから宇宙へと、限りない感受性と思考力を育ててくれるでしょう。

楽しみながら観るうちに、きっと興味のあるものが見つかります。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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なほび なほび  国民年金ぐらしの下流、いやいや顆粒老人です。学習塾経営の過去あり。現在は日本古典の解説等をライフワークに。