2018年3月18日 公開

「世界基準の幼稚園 6歳までにリーダーシップは磨かれる」に学ぶ

「世界基準の幼稚園 6歳までにリーダーシップは磨かれる」は、未就学児のパパママにぜひ読んでほしい1冊。著者の橋井健司さんは、東京で幼保一体型「幼児園 First Classroom 世田谷」を運営されています。本書で語られている「6歳までに磨きたい力」「6歳までにやっておきたいこと」を中心に紹介します。

「世界基準の幼稚園 6歳までにリーダーシップは磨かれる」

タイトル:世界基準の幼稚園 6歳までにリーダーシップは磨かれる
著者  :橋井健司(著)
出版社 :光文社
東京世田谷区にある、幼稚園と保育園の一体型スクール「幼児園 First Classroom 世田谷」。こちらの園を2007年から運営している、橋井健司さんの著書です。

「幼児園 First Classroom 世田谷」は、グローバル基準の保育を実現するため、あえて認可外に。異年齢の少人数教育を大きな特徴とし、独自のカリキュラムに基づいた保育や幼児教育を実践しています。

こちらの本は発売当初から注目度が高く、書店でも目立つ位置に置かれ、Amazonではしばらく品切れ状態が続いていたほど。

自身の園で気づいたこと、学んだことのほか、モンテッソーリやシュタイナー教育、ピアジェやルソー、アドラーなど海外の古今東西さまざまな教育から研究された充実の内容です。また日本の「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」まで、幅広くふれられています。

世界のトップリーダーを育てるための英才教育の方法?

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しかし、"世界のどこでも「自分らしく」"というこの園のキャッチコピーには惹かれたものの、「6歳までにリーダーシップは磨かれる」という本のタイトルに、別に我が子にリーダーを目指させる教育は必要ないかも……と感じていたのも事実です。

また読んでみて、著者の運営している園に「子どもをぜひ通わせたい!」と思っても、実際に通える距離でなければ、失望するだけでは……という危惧もありました。

でも実際に読んでみると、親としての学びが深く、赤線を引いて何度も読み返したくなる箇所が満載。本棚の目立つ箇所に置いて、今後も何度も読もうと思っています。

そして、必ずしも、「世界で羽ばたいてほしい」「リーダーシップを取れる人間になってほしい」と願う親、そのための英才教育の仕方だけにフォーカスされているわけではありません。

橋井さんも著書の中で、強いリーダーシップ能力は同時に豊かなフォロワーシップ能力を持つことであり、どちらも社会的に求められる基本的な能力だとしています。

「6歳までに磨きたい3つの能力」とは

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著者の橋井さんは、幼稚園の経営をする前は元々外資系企業での勤務が長く、国際的に活躍。多数の国の人々と接した中で、国際的な場における日本人の弱さに悔しい思いをされていたそう。

その中で、幼児期の過ごし方で土台が培われるのに、日本の幼児期(1〜6歳)の子どもたちから、国際的に活躍できる資源を奪っているのではないかと感じられているそうです。

そこで、意欲、行動力、決断力、責任感、コミュニケーション能力といった、人間の核となる資質を養う子育てを意識し、まずは「3つの資質」を持つ人になれるよう、それぞれをバランスよく伸ばして欲しいとしています。
1:自力で壁を突破できる人に
2:革新的な提案ができる人に
3:誰とでもうまくやれる人に
そしてこちらの「3つの能力」を伸ばすために、それぞれ6つずつのポイントを挙げて、具体的にどうすればいいかを説明しています。

「型にはまらない子にする18の理論」とは

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上記の「3つの能力」を伸ばすために、それぞれ6つずつのポイントを挙げて「18の理論」とし、具体的にどうすればいいか説明しています。
個人的に響いた箇所を3つずつ、9つの理論の見出しに絞ってご紹介します。

■パワフルな内発性を育むために
・「ボーっと見ているだけ」を見守る
・教えない。気づかせる
・没頭していたら「絶対に」止めない

■ポジティブな個性を育むために
・横並びではなく、ふぞろいな世界で
・「無意味」なことに徹底的に付き合う
・食事・トイレ・睡眠はマイペースでも

■アクティブな協調性を育むために
・一人遊びの時間を完走させる
・「みんな」は禁句
・「ごめんなさい」をすぐいわせない

他にも、一人遊びの時間、自由時間の時間の大切さ、おしゃべりを「静かにしなさい」と遮らないことの理由など、なるほどと思えることが山盛りです。

「ほめる」のではなく、「ありがとう」ということの大事さを説明している箇所も、具体的で納得できました。自分の行動が利益になった、とするより「自分の行いが誰かの役に立った」という経験の方が道徳心も育つということです。

「6歳までにやっておきたい9つのこと」とは

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1:とにかく「外遊び」をさせる
2:手指をしっかり動かす
3:食べることにこだわる
4:「原体験」はできるだけたくさん
5:「余白」は決して削らない
6:親が「捨てるもの」を決める
7:違う年齢同士で交流させる
8:「ごっこ遊び」は社会の縮図
9:伝統文化に触れさせる
大きな伸びしろを作るために、橋井さんが推奨しているのは、こちらの9つです。

これらは、園で学ぶことというより、親が意識した方がいいことばかりです。特に、”「余白」は決して削らない”というくだりにはとてもハッとさせられました。

最後に

日常生活の育児に活かせるポイントも多く、そしてどうしてそれがダメなのか理論的に書いてあってわかりやすいです。また、育児の悩みを解決してくれる箇所もたくさんあります。

特に「みんな一緒」が苦手なパパママ、お子さまにもオススメです。

この本では同意できることが多くても、日本の幼稚園・保育園・こども園で同様の保育や教育が受けられるとは限りませんし、「あの先生のこの指導が間違ってるのでは」と思うことが増えてしまうかもしれません。それでも、家庭内でそれぞれ「ここはいい!」「なるほど」と思えたところだけでも取り入れてみると良いのでは、と思います。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

志田実恵 志田実恵  エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。