2016年6月14日 公開

ときにはじっくり語りあおう! 絵本がつなぐ親子の「考える時間」

言葉がまだ十分に使えない子どもでも、心の中ではいろいろなことを感じたり考えたりしています。それを無理に言語化する必要はありません。読書でかんじんなことは、「考える習慣」を子どもに身につけさせること。それにふさわしい内容をもった傑作絵本の数々をご紹介します。

「こんな生き方もある」人生の選択を例示する啓蒙書

タイトル:ルピナスさん
著者  :文/絵 バーバラ クーニー 翻訳者 掛川 恭子
出版社 :ほるぷ出版

人生の意義を「世の中を美しくすること」ととらえる一人の老婆。その生き方を振り返りながら、「人生にはどんな意味があるの?」という子どもでも漠然と抱く問いかけについて、温かく柔らかな作画で描いています。

文章量は多めですが、平易かつ丁寧な表現なので、書き言葉に興味を示すようになった子どもの課題図書としても最適です。

「大切なことは変わらない」を説いた古典的名作

タイトル:ちいさいおうち
著者  :文/絵 バージニア・リー・バートン 翻訳者 石井 桃子
出版社 :岩波書店

出版から半世紀。本作が示した内容(都市開発、環境問題など)はいまや世界共通の課題です。
この本の描写について小さな子どもが具体的な感想を述べることは難しいでしょう。まずは「大切なものがなくなってしまうって、どう思う?」と問いかけてみてはいかがでしょうか。

色だけで子どもを夢中にさせる芸術作品

タイトル:あおくんときいろちゃん
著者  :文/絵 レオ・レオーニ 翻訳者 藤田 圭雄
出版社 : 至光社

青と黄は仲良しでいつも一緒。仲が良すぎて一緒に交じり合ったら「緑」になった……。
この本を貫くあらすじはそれだけです。作画も絵の具だけでさらりと描いた荒削りなもの。
でも、その背後には深い問いかけがあります。

人種や言葉などの違いを乗り越えて交じり合ったときに起きる変化。子どもがそこまでの考えに至ることはできませんが、自分と違う存在と融和することでなにかを生みだせるかもと感じることはできます。
その感受性を芽生えさせることがこの本の役割です。

命の意味を生涯にわたって問いかける傑作

タイトル:100万回生きたねこ
著者  :文/絵 佐野洋子
出版社 : 講談社

一粒で三度おいしい。それがこの絵本です。

100万回生まれ変わったとらねこを「うらやましいなぁ」と感じるのが第一段階。
「主人公のとらねこは、どうしてあのしろねこだけに夢中になったんだろう」と疑問を抱くのが第二段階。
そして第三段階はぜひ絵本のなかでご覧下さい。

生涯にわたって「命の意味」を考えさせてくれる比類なき一冊です。

「究極の無償の愛」を問いかける大ベストセラー

タイトル:おおきな木
著者  :シェル・シルヴァスタイン

翻訳者 :村上春樹
出版社 :あすなろ書房

もしくは

翻訳者 :ほんだきんいちろう
出版社 :篠崎書林

親子の愛といえば「無償の愛」。
その意味を、これ以上ないほどシンプルな絵と物語で描いたのが本作です。

この本は翻訳の異なる2つの版があります。特に「木が切り株だけに成り果てた」場面の訳語は、読み手に与える印象がかなり違いますので、子どもと一緒に感想を言い合ってみると面白いですよ。

絵本は子どもの考える力をはぐくむ強い味方

気に入った絵本を繰り返し読むのが子どもの習性。それを存分に活用すれば、普段はあまり考えない難しいテーマでも、子どもと一緒に考えることができます。絵本がつなぐ親子の時間で、子どもの可能性を広げていきましょう。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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takutaku takutaku  雑誌の編集を経験後、フリーライターとして活動しています。