2017年5月1日 公開

本当は賢くてかわいい?嫌われ者・カラスを好きになる絵本4選

ゴミをあさっている姿や「カァーカァー」と耳障りな鳴き声、全身真っ黒で気味が悪い!という理由でカラスが嫌い、ちょっと苦手という方も多いのではないでしょうか。カラスのことをちょっと知るだけで、その見方が少し変わる絵本をご紹介。親子で楽しんでみてください。

そもそも「カラス」ってどんな鳥?

Eric Isselee / Shutterstock.com
日本に生息するカラスは、ハシブトガラスとハシボソガラスの大きく2種類に分けられます。2種類とも雑食ですが、都市部でゴミをあさっているのは、大柄の肉食系ハシブトガラス。農耕地や河川敷などで群がっているのは、草食系のハシボソガラスで、やや小ぶりなのが特徴です。

カラスは元々、森林性の鳥でしたが、家庭から出される生ゴミを食料源としたことで、生息する場所が移り、都市部での個体数が増えたとのこと。

またハシブトガラスは、高い樹木に巣作りをする習性があるため、都会のビルや高架下などが絶好の場所となります。威嚇、攻撃するのは、自分たちの縄張りや巣に人間が近づいてくるのを防ぐためだといわれています。

都会にカラスが多い理由とは!?「カラス」

タイトル:カラス
  著者:とだこうしろう(作・絵)
 出版社:戸田デザイン研究室
3羽のカラスが山にいました。そこは、きれいな水やたくさんの草花があり、動物や昆虫が多く住んでいる楽園のような場所でした。ある日、山の木々が人間の手によって切り倒されてしまい、カラスたちの棲みかがなくなってしまいます。2羽のカラスは山に残り、1羽のカラスは仕方なく、東京へ飛び立つことに。でもそこは、すごく空が汚れていて音のうるさい場所でした。

人間の都合で棲みかを失い、人間の残した大量の生ゴミに群がることで生きるカラスたち。作者・とだこうしろうさんは、「都会に住みついているカラスは、哀れなもの」だとあとがきでつづっています。

「カラスも住みたくて都会にいるわけじゃないんだね」といった視点が生まれ、カラスに対して、どこか同情的な気持ちを芽生えさせてくれる絵本です。

読み聞かせ【3歳~】

カラスの美しさに気付かされる「カラスのスッカラ」

タイトル:カラスのスッカラ
  著者:石津ちひろ(作)猫野ぺすか(絵) 
 出版社:佼成出版社
ある日、起きたらかあさんカラスがいないことに気付いたカラスのスッカラ。涙をこらえ、かあさんカラスを探す旅に出ます。

なぞなぞや言葉遊びなど、軽やかな文体が楽しい絵本作家、石津ちひろさんの作品です。本作品はページをめくるたびに、擬音語や擬態語( オノマトペ)が登場。猫の鳴き声「ニャーン、ニャーン」や空き缶の転がる音「カラン、カラン」など、その箇所を子どもと一緒に読んでみるのも楽しい絵本です。

版画作家の猫野ぺすかさんが描くカラスの美しさにも注目。カラスの羽の色を表す「烏羽色(からすばいろ)」は、しっとりと艶がある黒で、少しだけ青や緑がかっているものを表現した色です。

その言葉通り、猫野さんのカラスは、とても美しい色彩で表現され、カラスが愛らしく描かれています。カラスが本来、美しい鳥であることに気付かされる絵本です。

読み聞かせ【2歳~】

天才詩人・谷川俊太郎が贈る「6わのカラス」

タイトル:6わのからす
  著者:レオ・レオーニ(作) 谷川俊太郎(訳)
 出版社:あすなろ書房
麦をめぐって、農夫と6羽のカラスが知恵比べをします。カラスに麦を食べられたくない農夫は畑にかかしを、そのかかしを驚かそうと6羽のカラスたちは大きなたこを作り……そんなことをしている間に、畑の麦が大変なことに。

「スイミー」でおなじみのイラストレーター、レオ・レオーニが描くカラスの絵本です。日本語訳は、天才詩人・谷川俊太郎さんが手がけています。

人間VSカラスの知恵比べを子どもにも分かりやすい言葉で表現。両者のやりとりがユーモアで、人間同様、カラスも賢い生き物なんだなーと思える作品です。

また仲違いしている両者を仲介するフクロウの言葉に、大人もハッとさせられます。話せば分かり合えるという大切なことも教えてくれます。

読み聞かせ【5歳~】

カラスも結構大変!?「からすのカーさんへびたいじ」

タイトル:からすのカーさんへびたいじ
  著者:オールダス・ハクスリー(文)バーバラ・クーニー(画) じんぐう てるお(訳)
 出版社: 冨山房
毎日毎日、産み落とした卵を知らぬ間にヘビに食べられてしまうカラスの夫婦。フクロウのホーおじさんの知恵を借り、憎きヘビを退治しようと作戦を立てます。

SF小説の金字塔「素晴らしい新世界」で知られるイギリスの作家、オルダス・ハクスリーが書いた、唯一の子ども向けの物語です。

夫カラスのデリカシーのない言葉やカラス夫婦の会話のやり取りに、子どもも思わず「クスッ」と笑ってしまいます。

しかも、大人でもちょっと鳥肌が立つほど、ヘビの描写が妙にリアル。その描写がより子どもを夢中にさせる要素かもしれません。

1年に297個も卵を産んでは、それをすべてヘビに食べられてしまう奥さんカラスが気の毒になる作品です。

読み聞かせ【6歳~】

カラスって面白い!

Julia Wegener / Shutterstock.com
われわれの日常で目にするカラスは、あまりいい印象を受けないものです。でも、「カラスもカラスなりに頑張って生きているんだな」と絵本を通じて思えるだけで、カラスを見る眼差しも少し変わったものになりませんか?生き物の生態を知ることで、面白い発見にもつながりますよ。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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あさの ひろみ あさの ひろみ  長野県出身。エディター兼ライター。東京の大学卒業後、出版社でマンガ編集者の経験を経て、一時帰郷。地元の新聞社で情報紙の記者としてローカルネタを取材する日々を送る。その後、転勤族の嫁となり、都内周辺をウロウロ。2015年に息子、2017年に娘を出産。わんぱくすぎる息子には枠にはまらない人になってほしいと願いながら日々、育児に奮闘中。