2017年7月5日 公開

フランスでも親しまれている【谷川俊太郎さんの絵本】の魅力

「生きる」など、親世代も小さい頃から小学校などで触れてきた谷川俊太郎さんの絵本。谷川さんの絵本は、フランスでも翻訳され、子どもたちに親しまれています。今回は、フランスでも受け入れられている【谷川俊太郎さんの絵本】の魅力についてお伝えします。

フランスでも親しまれている谷川俊太郎さんの絵本

詩人、劇作家、絵本作家として、幅広い活動をしている谷川俊太郎さん。さらに、多くのフランス人作家の絵本を日本語訳をされています。

一方で、谷川さん自身の絵本もまた、筆者が住むフランスで多数翻訳・出版されています。谷川さんの絵本のどのような点がフランス人に受け入れられているのでしょうか?

フランスにおいて谷川さんの絵本が親しまれている理由について、ご紹介していきたいと思います。

フランス人にとっての谷川俊太郎さんの魅力とは

独特の世界観

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フランスで人気の人、もの、コトに共通していることがあります。

それは【個性】があること。

誰かと一緒、同じこと、ありきたりなことは、あまり尊重されません。

絵本においても、個性豊かな作品が人気となることの多いフランス。

谷川さんの絵本はどの絵本も、ほかの絵本にはないユニークな世界観が詰まっています。独特の文章、音、色彩、絵、デザインを兼ね備えた谷川さんの絵本が受け入れられている理由のひとつなのかもしれません。

子どもの想像力を刺激する

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芸術の国フランス。一般的に、色彩感覚もとても豊かな人が多いです。

谷川さんの絵本には、豊かなカラーとさまざまなモチーフがちりばめられています。

そして中には抽象的で、一見すると何だかわからないようなデッサンも。大人からすると、「よくわからない絵だな」「文章が少なくて、絵も曖昧だな」と思ってしまいそうなものもあります。しかしそれらが上手い具合に、「このデッサンは何だろう?」「何をモチーフにしているのだろう?」といった疑問を抱かせ、子どもに想像する余地を残しています。

子どもの色彩感覚を刺激し、子どもが子どもらしく想像力を発揮できる要素がつまっている点も、フランスでも愛される理由のひとつだといえるでしょう。

言語を飛び越えた「人間性」

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人間の心の中の深いところにある、また幼少期の子どもが抱える、言葉にならない「何か」。その「何か」、いわば「人間性」とでもいえるものを、強烈に刺激してくれるのが谷川さんの作品。

そのあたりも、言語を越えて愛される理由かもしれません。

フランスでよく読まれている谷川さんの絵本

「もこもこもこ」

タイトル:もこもこもこ
著者:谷川俊太郎(作) / 元永定正(絵)
出版社:文研出版
谷川さんの「もこもこもこ(仏題:Bloup ! Bloup !)」は、子どもの色彩感覚を刺激する絵本として想像力を尊重するフランスで人気です。

擬音と絵がメインで2~3分もあれば読めてしまいます。大人からすると、「はたしてこの絵本は費用対効果があるのかな?」と計算してしまうかもしれません。でも、子どもの想像力を大人が制限してしまわないようにするための、しかけがたくさんある絵本で、何度も何度も味わえる奥深さがありますよ。

「あな」

タイトル:あな
著者:谷川 俊太郎(作) / 和田 誠(画)
出版社:福音館書店
フランスでは”Hiroshi creuse un trou(直訳:ひろしは穴を掘る)”という題名で出版されています。
ただただ穴を掘り続ける主人公の「ひろし」と、彼に「なぜ」「どうして」穴を掘るのかを問いかける大人との対比が上手く描かれている作品です。

まるで大人が忘れてしまった大切な何かを呼び起こしてくれるような、深いメッセージがつまっていて、子どもだけでなく大人も楽しめる絵本です。

子どもの世界観が、詩と哲学を交えたような独特なスタイルで描かれている点がフランスで人気です。

また、絵本の見開きが通常のものとは異なり、カレンダーのように下から上へ、ページをめくるようになっている点も、オリジナリティがあり、フランスでも受け入れられているようです。

「わたし」

タイトル:わたし
著者:谷川 俊太郎(文) / 長 新太(絵)
出版社:福音館書店
フランスで”Moi(訳:わたし)”という題名で出版されています。

「わたしは誰?」

「わたし」は「わたし」でも、ほかの誰かにとっては「妹」であり、「友だち」でもあり、動物からしたら「人間」だったりします。

谷川さんの「わたし」は、子どもが自分を主体とした人間関係、社会関係について学ぶのにとってもよい絵本。

普段問うことのない「わたし」について、疑問を投げかけている点がフランスでも受け入れられているようです。

読んだあと、思わず自分の子どもに「あなたは誰?」と問いかけたくなるような絵本です。

子どもの感性、選択を尊重する

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小さいうちから子どもを小さな大人として扱うことが多いフランス。

図書館では、小さい子どもに好きな絵本を選ばせているお母さんをよく見かけます。

日本では、親心から、子どもにはよい本、評価が高い本、人気の本を読んで欲しいと思うパパママも多いでしょう。でも、一歩引いてみて、子どもが興味を持ち、自分自身で手に取る本に注目してみるという姿勢も大切ではないでしょうか。

最後に

谷川さんの絵本には子どもの興味・関心を引く魅力がつまっています。

一見すると大人には意味がわからなくても、子どもの感性に委ねるようなしかけがある谷川さんの世界が、フランスでも受け入れられているのかもしれませんね。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

早野沙織 早野沙織  在仏3年目、フランス人旦那と二児(2歳と0歳男児)とアルプス地方グルノーブル市在住のママライター。慶応義塾大学法学部卒業。現地から日本ではあまり知られていないフランスの地方・育児事情をお届けします!