2019年2月18日 公開

生まれてすぐに息が止まったわが子……NICUでの治療へ。出産番外編【英国すくすくレポ】

お腹から出てきたときは何事もなかった娘ですが、へその緒を切って、胸の上に置いてもらった瞬間に異変が起きました。出産後にNICUにお世話になった経験談をイラストエッセイでお届けします。

「時間はかかったけど無事に生まれた」……そう思っていた

そして、とても静かになりました。

そのとき感じた違和感……。

「産声を聞いてない」と思いました。それに、ふと閉じた目も力尽きたように見えたのです。

一瞬で血の気が引きました。胸の上で抱いている娘が、息をしていないのです。

とっさにミッドワイフさんの名前を呼びました!

ミッドワイフのリサさんは、壁にあった緊急用のボタンを押しました(押すまで、そんなボタンがあったことには気づきませんでした)。

それから本当にすぐ、医療班が分娩室に駆け込んできました。

私の胸の上から、緊急医療用のベッドに運ばれていった娘。

そのときには、もうすでに肌の色が暗い紫色になり、力が入っていない体は、まるでゴム人形のように手足がダランとなっていました。今でも思い出すと震えるほど本当に怖かったです。

この後どうなってしまうのか、医療用ベッドで何が行われているのか、それを確かめたかったものの、会陰縫合の必要もあり、無痛分娩の後で歩くこともできず。離れたベッドから少しだけ見える娘の小さな体に、ただただ祈るしかありませんでした。

蘇生措置をした娘、私の産後の処置の方も終わって、医療班もミッドワイフさんも、分娩室から出ていきました。静かになった部屋で、取り残された夫と私。

赤ちゃんは大丈夫なのか、それだけが気がかりでした。このときは、まだ赤ちゃんが助かるのか分からない状況で、恐怖の中で待ちました。

それから……

4時間後、看護婦さんが来て、赤ちゃんが命を取り留めたこと、自分で息をできるようになったことを伝えに来てくれました。

そして、しばらくして落ち着いてから、NICUへ面会の許可がでました。

小さい体には、たくさんの装置やチューブがつけられ、頭・体にはクーリングブランケットと呼ばれる体を冷やすものを巻かれて、声も出さずにそっと寝ていました。

クーリングブランケットというのは、新生児医療に非常に有効だということ、10~15分ほど息をしていなかった娘の脳への障害を最小限にすることにも効果があると説明を受けました。

息が止まった理由は、分からないとのこと。ですが、最初に生まれたときには、ちゃんと目を開けたため、新生児仮死状態でなく、へその緒を切ったことで、酸素が行き渡らなくなり、息が止まってしまったのではないかと判断されました。

ときどき、寒さに震えるようなしぐさを見せる娘。娘の姿を見て涙する私たちに、NICUのスタッフの皆さんは温かい言葉をかけてくださいました。

「NICUでは赤ちゃんのケアはもちろんですが、ご家族の心のケアも仕事の一つです。心配があれば、いつでも相談してくださいね」。

面会を終えて、夫は帰宅、入院用の病室へ戻った私。

ですが、入院中は戦友たちとの出会いも……。

母親の私だけ先に退院。娘はNICUに入院して通うことに

赤ちゃんをお迎えするために用意した子ども部屋が、とっても寂しく感じました。生まれたのに、ここにはいない、今後どうなるかはまだわからない、障害が残るかもしれないー。いろいろな不安のなか、とにかく祈って待つことしかできない無力さがありました。

しかし、ありがたいことに……

クーリングブランケットの治療は、成功。その後、数日で無事に娘はNICUから退院することができました。出産後やっと、ちゃんと抱っこできたときの感動はひとしおでした。

それから数年ー。

元気に成長した娘(長女)と妹の、ちょっと笑える日常エピソードはこちらから♪
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう

3分でわかる知育マガジン「Chiik!」

RECOMMEND この記事を読んだあなたにオススメ

NICUからの退院準備!わが子とはじめての共同生活【英国すくすくレポ】

NICUからの退院準備!わが子とはじめての共同生活【英国すくすくレポ】

出産直後、赤ちゃんがNICUに入院。一緒の時間を過ごせないまま一旦、退院をしていた筆者ですが、娘の退院準備の一環として、「トランジショナル・ケア」を病院か...
麻酔が効き過ぎた!制御不能の足でいきめない!?出産編(4)【英国すくすくレポ】

麻酔が効き過ぎた!制御不能の足でいきめない!?出産編(4)【英国すくすくレポ】

前回の出産編(3)では、無痛分娩で麻酔を打ったはいいものの、微弱陣痛でお産が長引いて胎児の心拍も落ちはじめ、まさかの帝王切開に……!?という事態までをお伝...
無痛分娩、お願いします!ところが……?出産編(3)【英国すくすくレポ】

無痛分娩、お願いします!ところが……?出産編(3)【英国すくすくレポ】

前回の【英国すくすくレポ】の出産編(2)では、陣痛間隔はまだ4分でも痛いので、湯舟に浸かってみたら……。あれ?痛みが和らいだけど、陣痛が消えちゃった!?そ...
 陣痛間隔2~3分まで待機指示!でも痛みで我慢できず……出産編(2)【英国すくすくレポ】

陣痛間隔2~3分まで待機指示!でも痛みで我慢できず……出産編(2)【英国すくすくレポ】

強い陣痛がはじまり、間隔も10分以下になったものの、自宅待機が決定してしまった前回の【英国すくすくレポ】出産編(1)。痛みに耐えながら、夫と帰宅することに...
ついにはじまった陣痛。決戦のときを迎え、いざ病院へ!出産編(1) 【英国すくすくレポ】

ついにはじまった陣痛。決戦のときを迎え、いざ病院へ!出産編(1) 【英国すくすくレポ】

【英国すくすくレポ】では、イギリスでの妊娠出産子育て体験談をイラストエッセイでお届けします。今回から、出産編がスタート!前回の陣痛を呼ぶ行動のあと、起こっ...

WRITER

いしこがわ理恵 いしこがわ理恵  在英12年目ハンドメイド好きの2児の母。武蔵野美術大学卒業。現在は教育に携わる仕事の他に、日本にルーツのある子どもたちを対象とした日本語子ども会活動・児童文庫活動も行っています。興味の範囲が幅広いので、常にいろいろな方向にアンテナをはりつつ情報収集が日課です。ハッピー子育てに役立つ情報をみなさまにお届けできれば嬉しいです。Instagram @rie.ishikogawa