2018年1月29日 公開

【子どもが人前で話す練習】オーストラリアの学校で行われる教育とは

人前で話すのは、大人でも難しいことです。子どものうちから人前で話す機会を持った方がよいでしょうか?スピーチやディベートがさかんな海外の国々では、どんな教育が行なわれているでしょうか。オーストラリアの学校で行われている【子どもが人前で話す練習】について紹介します。

【人前で話す】って難しい?

人前で話すのが苦手、という人は多いでしょう。しかし、社会に出れば、人前で話す機会が少なからずあります。小さいうちから、このような機会に慣れておくことが大切かもしれません。

筆者が住むオーストラリアや欧米諸国では、演説やディベートなど、人前で話したり議論することが活発です。そのような国々の子どもたちは、小さいうちから練習をしているのでしょうか?

オーストラリアの学校教育では、低学年から【人前で話す練習】が積極的に行なわれていますが、とても興味深く、素晴らしい取り組みだと筆者は感じました。そこで、こちらの学校で行われている2つの【人前で話す練習】について紹介します。

「Show and Tell」という取り組み

筆者の子どもが作成した、Show and Tell のメモの一例。小学1年生のときのもの。
via Photo by author
1つめは、Show and Tell という取り組みです(または My news, News telling など、呼び方はいろいろ)。

これはクラスメイトの前で、毎週決められたトピックについて、自分の意見を発表する活動のこと。Pre-Primary(5歳児クラス)または小学1年生から授業に取り入れられます。

子どもたちは、「自分が何曜日の担当か」と、「何週目はどんなテーマか」を、学期のはじめに知らされます。そしてテーマごとに、「何を話すか?」をメモにまとめるための紙を渡されます。子どもたちは家庭で、自分の発表の日までに、その用紙を書き込みます。

テーマは、子どもにとって身近なものです。たとえば、「自分のお気に入りのおもちゃについて」「好きな食べ物について」「スクールホリデー中にやったこと」などです。

発表が終わると質疑応答タイムがあり、聞き手となっている子どもたちが、挙手をして質問を行います。

メモをつくる際に重視されるのが、必ず「When(いつ)・Who(誰が)・What(何を)・Where(どこで)・Why(なぜ)」の5項目を記入することです。これらを必ず発表に盛り込むよう指導されます。ただし、内容そのものについては問われません。

たとえば、「スクールホリデー中にやったこと」というテーマについて、筆者の息子は1年生のときに、「スクールホリデーに、僕の家族は、キャンプ場でキャンプをしました。なぜならキャンプは楽しいからです。」というように発表しました。

【人前で話すこと】はホントは楽しい?

学期のはじめに手渡される、Show and Tell のテーマの一覧。
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このShow and Tell のもうひとつのポイントは、自分の発表に関連する物(実物・写真など)を、当日学校に持ってくることです。それを示しながら発表します。

クラスメイトとはいえ、20名ほどの前で自分のことを話すのは緊張するものです。

しかし、たとえば「自分のお気に入りのおもちゃについて」というテーマの場合、自分が大好きなおもちゃを、その日は特別に学校に持ちこみ、クラスメイトの前でそれを見せながら発表を行います。

子どもにとって、自分の大好きなものについて話すのは、緊張すると同時に、ワクワクする楽しい瞬間でもあるようです。

先生は、子どもたちの発達に応じて、適切なテーマ選びを行います。回を重ねて子どもたちが慣れてくると、だんだんと学習に絡めたテーマや、抽象的なテーマを扱うようになります。

全校集会の司会も子どもたちの役割

1年生でも全校集会で司会を務めます。
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もうひとつ、学校で子どもたちが【人前で話す】大きな機会があります。

オーストラリアの小学校にも定期的な全校集会(assembly)がありますが、クラスごとに持ち回りで集会を担当する機会が、年に一度あります。集会の担当になったクラスは、司会の役割とクラスの発表を行います。

司会は、開会の挨拶からプログラムに沿った議事進行、終わりの挨拶などをすべてのクラスの子どもたちが行ないます。また、クラスの発表では、そのときの学習に関連した歌や踊りなどを発表します。

小学1年生の子どもたちも、分担しながら司会進行をこなし、自分たちの発表を行います。

全校生徒の前でマイクを握るのは緊張することだと思いますが、低学年の子どもたちもしっかりとやり遂げます。

最後に

オーストラリアの学校では、このようにして、子どもたちが人前で自分の意見を話す、という機会をつくっています。

こうした活動のポイントは、「まず小さいうちから人前で話すことに慣れる」ということ。また人前で話すとき、どんな点に注意すればよいか?たとえば 5W(いつ、どこで、誰が、何をした、なぜ)を盛り込むなど、シンプルで具体的なノウハウを身に付けていくことです。

私たちが「人前で話すのが難しい」と感じてしまうのは、漠然と「何か特別な、立派なことをいわなければならない」と思ってしまうからではないでしょうか?しかしその必要はなく、【聞き手が必要とする情報を整理して、自分の言葉でわかりやすく伝えること】が、人前で話すスキルなのだと、オーストラリアの教育を通して考えました。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

Chieko Chieko  成人した娘、小学生の息子を持つ、二児のママ。2013年より西オーストラリア・パースに家族移住しました。英語教育やオーストラリアについて書くブロガー・フリーライターをやりながら、プログラミング・機械学習を勉強中です。