2019年8月31日 公開

幼児の「鉄分」不足を解消するには?

毎日の食事で「鉄」は足りていますか?成長期の子どもは鉄欠乏性貧血になりやすいとされています。では鉄分を上手に摂取するために、どのような食材を意識して活用すれば良いのでしょうか。鉄欠乏性貧血の症状や、食事における鉄分の摂り方についてご紹介します。

鉄は体の中でどんな役割を担う?栄養成分としての「鉄」


「鉄」は体に必要な栄養成分のうちのひとつです。体の中でどのような働きをしているのかご存じでしょうか?鉄は、血液中で赤血球を作っているヘモグロビンの主成分として働いています。ヘモグロビンは酸素を運ぶのに役立ち、鉄を摂取することは体のすみずみに酸素を行きわたらせるためにも不可欠です。

脳や中枢神経の発達にも鉄は大きく関わっており、脳の発達が著しい幼児期~成長期の子どもは、特に不足することないように気を付ける必要があります。

子どもは鉄分が不足しがち?


離乳食期の赤ちゃんが鉄分不足になることは少なくありません。特に気をつけたいのは、母乳やミルクから栄養を補っていた赤ちゃんが離乳食に移行する時期です。この時期は食べられる食材がまだ少ないこともあり、栄養バランスが乱れてしまうことがあります。

なかでも体内の貯蔵鉄が減少してくる生後7~9カ月以降は注意が必要です。離乳食を作る際は、使う食材がどのような栄養素を含んでいるのかをチェックしてみましょう。子どもの頃は、体の成長にたくさんの栄養を必要としますが、食事に対して好き嫌いをしてしまうことも多いもの。このため必要な栄養素が足りなくなりがちです。

国が定めている鉄の食事摂取基準(推奨量)は、3~5歳の子どもで男女ともに1日に5.5mgとされています。ところが平成29年度の厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」によると、1~6歳の鉄分の摂取量は、平均値が4.3mg、中央値は4.0mgという結果でした。全体的に鉄不足傾向にあることが数値に現れています。

鉄欠乏性貧血とは

急激に身体が発育する成長期や、母乳やミルクから離乳食に移る期間、女の子では月経が始まる頃に多いとされるのが「鉄欠乏性貧血」です。ママの場合は、妊娠中や無理なダイエットによっても鉄が不足しやすいので注意してください。

貧血と聞くとめまいやふらつきの症状がイメージされますが、これは低血圧が原因で、上半身が血液不足になるために起こります。毎日の暮らしのなかで徐々に症状が進行するため、突然発症するというわけではありません。

鉄欠乏性貧血とは、血液中の赤血球(ヘモグロビン)が減少した状態で、顔色の不良や集中力の低下、異常な眠気や、理由が思いあたらないのに元気が出ないなどの症状が現れます。本人に自覚がなく、病院で血液検査を受けてはじめて気付くというケースも少なくありません。赤ちゃんや子どもの様子で思い当たるところがないか、振り返ってみましょう。

鉄が含まれている食品


鉄不足にならないように、栄養バランスのとれた食事で鉄分を補いたいところです。鉄分は大きく分けて、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類。ヘム鉄は、肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。

ヘム鉄以外の鉄分を非ヘム鉄と呼び、こちらは植物性食品に多く含まれる栄養素です。ヘム鉄は非ヘム鉄よりも吸収率が高いのが特徴。非ヘム鉄を摂取する場合は、吸収率が上がるように一緒に食べる食材を工夫することが望ましいでしょう。

ヘム鉄が多い食材

吸収率の高いヘム鉄を多く含む食材は料理のメインになるものも多くあります。毎日の食事で積極的に取り入れていきましょう。

【ヘム鉄を多く含む食材】
レバー、カツオ、マグロ、イワシ、アサリの水煮、牛もも赤身肉、牛ヒレ肉 など

非ヘム鉄が多い食材

非ヘム鉄は主に野菜や海藻に含まれています。吸収率はヘム鉄ほど高くはありませんが、合わせる食材次第で吸収率を高めることも可能。卵は動物性の食材ですが、含まれている鉄分は非ヘム鉄です。

【非ヘム鉄を多く含む食材】ほうれん草、小松菜、大豆製品、卵黄、切り干し大根 など

鉄分入りの栄養食品も活用


1日に必要な鉄分を毎日の食事でまかなおうとするのは、至難の業です。幼児用の健康食品や健康飲料には、鉄分やカルシウムなど、子どもの発育に必要な栄養素が含まれているものもあります。商品情報をチェックして、バランスの取れた食事にプラスして活用してみても良いでしょう。

サプリメントも活用できますが、あくまでも補助的な役割だと理解して活用します。過剰症を防ぐためにも用量を守ることが大切です。

吸収率アップ!鉄分と一緒にとりたい栄養成分


前述した通り、鉄分は一緒に食べる食材を工夫することで、体への吸収率を上げることができます。あわせて摂りたい栄養素をご紹介しましょう。

ビタミンC

体に入ってきた非ヘム鉄は、そのままの形では吸収することができないため、還元されてから摂り込まれます。その還元の際に必要となるのが酵素やビタミンC。非ヘム鉄とビタミンCを一緒に摂取すると吸収率が上がるとされるのはそのためです。

卵とブロッコリーを合わせて炒めるなど、組み合わせを考えて献立を立ててみてください。

たんぱく質

動物性たんぱく質は、腸での鉄の吸収を促進します。動物性たんぱく質そのものにも非ヘム鉄をはじめとする鉄分が含まれているため、ダブルの効果が期待できるでしょう。ひじきと大豆の煮ものに肉類を入れたり、ほうれん草のおひたしにかつお節をかけたりと、おいしく鉄分を摂取できるレシピは多くあります。

過剰摂取はもちろんNG。バランスのよい食事を目指して

鉄分は体にとって必要な栄養素ですが、過剰に摂取するのはもちろんNGです。国が定めている耐容上限量は1~5歳で1日25mg(1~2歳の女性は20mg)まで、6~7歳は30mgまでとなっています。

赤ちゃんから成長期までは特に、体がさまざまな栄養素を必要とする時期。栄養補助食品も上手に活用しながら、バランスの良い食事を目指しましょう。
(監修:管理栄養士  佐藤まゆこ )
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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コバヤシ トモコ コバヤシ トモコ  奈良県出身/フリーライター/週末釣り部/海と釣りが好き/ 優しいダンナ君と優しい中学生の双子男子のステップファミリー