2017年2月6日 公開

学校でもおうちでも、世界で広がるマインドフルネスの輪

日本でも聞くことが多くなったリラックス法「マインドフルネス」。発祥の地である米国をはじめ、世界各国の教育現場で取り入れられています。今回は英国での子どもの教育に関わるマインドフルネス事情にスポットを当て、学校での導入例や、おうちで簡単にはじめられる方法をご紹介します。

マインドフルネスとは?

マンドフルネスはもともと仏教のサティという概念を英語に訳したもので、日本語では「念」「気付き」といいます。主に瞑想を通してリラックスし、自分と向き合うメソッドです。1980年代に米国のジョン・カバット・ジン教授が西洋的なストレス低減法・認知療法として確立しました。

カバット・ジン教授のマインドフルネスは全世界に1,000人以上の公認インストラクターがおり、日本にもマインドフルネス学会があります。一方、 健康法としてのマインドフルネスも浸透しており、さまざまな形で取り入れられています。

どんな効果があるの?

マインドフルネスの基本は瞑想と呼吸法です。これらを通してリラックスすることで、過去や未来のことで悩むのをいったんやめ、今この瞬間の自分の体験に注意を向けられるようになります。こうした訓練を通じて、物事を前向きに考えられるようになったり、集中力が高まったりするといわれています。

また、カバット・ジン教授のマインドフルネスはストレスや病気による痛みの軽減、うつ病の再発や摂食障害などの防止に目を向けており、教育現場や医療の場でも利用が増えています。

マインドフルネスは子どもにも効果が

マインドフルネスは子どもたちにも良い効果をもたらすと注目を浴びてきました。リラックスして今の自分を見つめることで、緊張やストレスへの耐性ができ、思考や感情のコントロールができるようになるといわれています。

子どもとマインドフルネスについての絵本「Glad To Be Dan」の作者、ジョー・ホワースさんはこのように説明しています。
身体の傷は目に見えるものですが、心の傷は注意をしていないといつの間にか広がり、手遅れになる可能性があります。子どもたちにとって、思考や感情をコントロールできると知ることは大きな力になります。周りで何が起こってもリラックスできるようになるのです。
こうした効果はさまざまな研究でも明らかになっています。2015年に発表された研究では、10〜11歳の児童に4カ月の瞑想プログラムを受けさせたところ、認識や記憶の分野で向上が見られたとの報告がありました。また、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の児童にも効果があったという研究結果も出ています。

英国では学校への導入も

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近年、マインドフルネスを導入する小中学校が世界中で増えています。例えば英国では、2009年に発足した「マインドフルネス・イン・スクール・プロジェクト(MiSP)」が、カバット・ジン教授のマインドフルネスに基づいた児童・教師向けのプログラムを提供しています。MiSPの認定を受けた教師は2011年には90人でしたが、2016年10月時点では4,000人と大きく拡大。全国の教室でマインドフルネスが実践されています。
実際にマインドフルネスを導入している教室の先生は、現代の子どもたちは学校やその他の活動で常に忙しく、マインドフルネスはそうしたものや、日々の不安から解放される貴重なひとときになっていると説明しています。また子どもたちも、「集中力が上がって、他の人を気にしないようになった」「落ち着いてリラックスできるのが好き」「今ここにいるってことが実感できるようになった」と話しています。

おうちでもできるマインドフルネス

マインドフルネスは研究に基づいたメソッドですが、そのエッセンスは気軽におうちで取り入れることができます。ここでは、簡単にはじめられる4つの方法をご紹介します。

1、腹式呼吸

これはなかなか寝付けないお子さまに効果があるそうです。お子さまを仰向けに寝かせ、両手をお腹においてもらいます。息吸って吐くときに両手が上下に動くのを感じましょう。お腹と手の動きに集中することで、他のことへの意識が薄れ、だんだんとリラックスすることができます。

2、幸せ貯金箱

綺麗な色の紙とペン、そして紙を入れておける箱や瓶などを用意します。何かお子さまが楽しいこと、幸せだと思うことがあったとき、それを紙に書いて貯金箱に入れてもらいます。まだ文字が書けないお子さまの場合は、親御さんが代わりに書いてあげても大丈夫です。

お子さまがネガティブになっている時や怒りで興奮しているときには、貯金箱の中から紙を1枚引いて、楽しかったことを思い出してもらいましょう。感情に流されず、落ち着くきっかけを与えてくれる方法です。

3、デジタル・デトックス

学校から帰ってから寝るまで、すべてのデジタル機器から離れて生活してみるのも1つの方法です。ゲームで遊ぶ、読書をするなど、普段とは違う落ち着いたひとときが得られます。

4、楽しかったことを振り返る

夜寝る前、お子さまにその日にあった楽しかったこと、良かったことを5つ振り返ってもらいましょう。5つ以上あるときもどんどん挙げてください! 前向きな気持ちで眠りについてもらうのが目的です。

大切なのはシンプルさ

教育現場から日常まで、さまざまな場面で活用されているマインドフルネス。日本でも多くの関連書籍が出ていますので、まずはおうちでできることからはじめてみてはいかがでしょうか。

お子さまと一緒に行う場合に大事なのは、ひとつひとつのプロセスをシンプルにすること。方法にとらわれず、お子さま自身がマインドフルネスを前向きで楽しく、リラックスできるものだと感じることがもっとも大切ですよ。

Amazon.co.jp: Glad to Be Dan: Discover How Mindfulness Helps Dan to Be Happy Every Day: Jo Howarth, Jude Lennon, Trevor Howarth: 洋書

Jo Howarth (著), Jude Lennon (著), Trevor Howarth (イラスト) Createspace Independent Publishing Platform
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

Sakiko Sakiko  在英5年目の経済・教育ライター。東京都港区育ち。幼稚園より雙葉学園に通い、慶應義塾大学法学部に進学。大学卒業後は出版関連企業に3年従事した後、渡英。ロンドンの大学院にて出版ビジネスを学び、現在もロンドンで暮らしています。紅茶とバラの国から、お子さんの明日につながる記事をお届けします!