2018年2月28日 公開

幼児教育が変わる?幼児教育における課題とは

幼児を取り巻く環境の変化とともに、幼児教育の現場も変わる必要が出てきました。現状の幼児教育の課題とは一体何でしょうか。教育現場ではどのような対処を行えば、課題を解決していけるのでしょうか?文部科学省の方針をもとに、幼児教育の今と未来を考えます。

幼児教育の現状とは?


子どもは幼児期のうちに、社会性や表現力、人間関係など、社会でよりよく生きるために必要な力の基礎を学びます。生活や遊びのあらゆる体験をとおして学びを得て、人間的な成長を目指すのが幼児教育です。

現状の文部科学省の目指す幼児教育は、これまでのメソッドを引き継ぎ、集団生活の中で健やかな心身と創造性、道徳性を培うことがテーマになっています。しかし、近年はさまざまな課題も顕在化してきました。特に、子どもたちの意欲関心の低下や、集中力・自制心の低下、運動能力の低下などが指摘されています。

これらは社会の変化によって幼児をとりまく環境が変化したことが原因とみられています。幼児教育の在り方も変化が求められていると言えるでしょう。

地域の教育力の低下

子どもが生活する環境は、数十年前とは大きく変わっています。まず、少子化と核家族化の進行によって、近所の子どもたちが集まって遊ぶ機会が減りました。

インターネットやゲームなど、屋内かつ一人で完結する遊びが増えたのもその要因です。そもそも都市化が進んだことで公園や広場など安全な遊び場が少なくなっているという面もあります。また、地域のつながりが希薄になり、近所の大人がよその子どもに対して話しかけることも、現代ではまれになりました。

そのため、これまでは自然と身についていた運動能力や好奇心、人間関係を築く力が身につきにくくなっていると言われています。

家庭の教育力の低下

地域社会だけでなく、家庭という小さな単位でも子どもの教育環境は変化しています。まず、女性の社会進出で共働き家庭が増えました。さらに労働時間も増加傾向にあり、親子の時間が十分に確保できなくなっています。

幼児期にパパママからの愛情を感じ、信頼を覚えることは将来他人とかかわるうえで非常に重要です。預かり保育などの多用は、子どもの情緒への影響を心配する声もあります。

また、先述のとおり、地域との交流が希薄化したことで、パパママにとっては子どもの預け先や悩みの相談相手がいないという問題も。親のストレスは子どもの成長に悪影響を及ぼします。

家庭、地域、幼稚園の連携が必要

本来は、家庭・地域・幼稚園等の教育施設が連携し、一体となって幼児を育てていくことが、幼児教育でした。しかし、核家族や単身親家庭も増え、信頼で結びついた近所付き合いも減った昨今、それぞれが独立しているような状態です。

このままでは、家庭での生活と、幼稚園での生活が子どもの中でもつながりません。本来教わるべきだった生活習慣が身についていない、幼稚園での学びが家庭に活かせないといった問題もあるでしょう。

課題解決のためには家庭と地域の教育力を向上と三者の連携が不可欠です。文部科学省では、今後家庭と地域社会の教育力向上を助ける役割を、幼稚園が担っていく必要があるとの方針を示しています。

変わり続ける幼児教育

幼児教育は、これまでの教育メソッドでは通用しない課題が突き付けられています。多様化する現代は、家庭も環境も個々によってさまざまです。しかし、子どもの教育において、パパとママが一番の責任を持つことは変わりませんし、家庭や地域の役割を完全に幼稚園が担うこともできません。

子どもの豊かな人間性を育てるためには、家庭と地域、幼稚園という3つの教育現場がそれぞれ自分の役割を再度確認し、協力し合う体制を築くことが大切です。家庭では、幼稚園や制度の助けを借りつつ、おうちでできる教育をきちんとこなしていきましょう。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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コバヤシ トモコ コバヤシ トモコ  奈良県出身/フリーライター/週末釣り部/海と釣りが好き/ 優しいダンナ君と優しい中学生の双子男子のステップファミリー