2019年2月1日 公開

リベラルアーツとは?アメリカのリベラルアーツカレッジの現状

日本の大学でも取り入れるところが増えてきた「リベラルアーツ」。そもそもリベラルアーツとは何でしょうか?ひと足先にこの考え方が発展した、アメリカのリベラルアーツカレッジの現状も併せてご紹介。注目を浴びる背景を探りながら、リベラルアーツをわかりやすく解説します。

リベラルアーツとは?

Dencey/CC-PD-Mark
リベラルアーツは英語で「liberal arts」、人間が自由になるための技能がそもそもの意味です。古代ギリシャで生まれたこの概念はローマ帝国に伝わり、文法・修辞・弁証・算術・幾何・天文・音楽の「自由七科」となりました。

現代では、大学で幅広い分野の教養を習得するための学問という意味で使われています。日本の大学の教養科目に近いですが、目的は単に知識を得るだけではなく、それを使いこなした人間としての成長です。つまりリベラルアーツとは、人間力を高めるための総合的な学問と言えるでしょう。

リベラルアーツカレッジとは?

上述したリベラルアーツを基本とした教育体制の大学が、リベラルアーツカレッジです。世界のなかでも特にアメリカには、多くのリベラルアーツカレッジがあります。

リベラルアーツカレッジの第一の特徴は、ハーバード大学などの総合大学と比べて小規模で、アットホームな教育環境であること。大学院が併設されていないので、教授からの直接の指導を多く受けられるメリットがあります。

また人文系、理系にこだわらず複数の分野から科目を選択するため、主専攻・副専攻はフレキシブル。たとえば「音楽史とバイオ科学」など、主専攻と副専攻が全く違う分野でも構いません。卒業後は総合大学に編入したり、他大学の大学院に進学したりする人も多くいます。

アメリカでリベラルアーツカレッジが発達した理由は?

ところでリベラルアーツカレッジは、なぜ生まれ故郷のヨーロッパよりアメリカで発達したのでしょうか?その理由は、次の3つだと考えられます。

1. 欧州では昔から高校で手厚いリベラルアーツ教育が行われている。しかしアメリカの高校は違っているため、その部分を大学で補う必要があった。

2. 民主主義の国アメリカでは、市民自身が考え行動するため教養を高める必要があった。

3. さまざまな文化的背景を持った人々から成るアメリカでは、米国人としてのアイデンティティをしっかり持たせる必要があった。

アメリカの主なリベラルアーツカレッジ

アメリカの主なリベラルアーツ・カレッジをご紹介しましょう。どの大学もリトルアイビーと呼ばれる名門大学。リトルアイビーとは、小規模校ながらアイビーリーグと同レベルの教育受けられると人気を集める、大学群のニックネームです。

ウィリアムズ・カレッジ(マサチューセッツ州)

Daderot /PD-self
アメリカのリベラルアーツカレッジで最も名門と言われる、1793年創立の大学です。アメリカUS News社が発表している「大学ランキング」にて、13年連続1位を獲得しています。教育の質がかなり高く、そのレベルはハーバード大学やイェール大学にも劣りません。

アマースト・カレッジ(マサチューセッツ州)

Ibn Battuta/PD-user
ウィリアムズ・カレッジのライバル校と名高い、1821年創立の名門大学です。日本とも関係が深く、「少年よ大志を抱け」で知られるクラーク博士、同志社創立者の新島襄も学びました。およそ850もの科目から、学生が自由にカリキュラムを組める「オープンカリキュラム」が有名です。

ボウディン・カレッジ(メイン州)

Daderot/PD-self
1794年創立、第14代米国大統領フランクリン・ピアースも学んだ名門です。リベラルアーツを「学生が万が一のリスクに見舞われたとき、それを支援するための教育」と考えていることが特徴。専攻・副専攻のジャンルが幅広く、古典学はもちろん LGBTに関する研究まで広く学べます。

アメリカのリベラルアーツカレッジの現状は?

アメリカのリベラルアーツ・カレッジですが、最近の評判はどうでしょうか?もともとリベラルアーツとは、人間力を高める学問。しかし大学では人間力うんぬんより、収入に直結するもっと実用的なことを学びたいという傾向が近年のアメリカで強まっています。

高い学費を奨学金で賄うアメリカの大学生たちにとって、卒業後高収入の仕事が見つかるか否かは死活問題になることがその背景です。私立大学で学費も高く、現在注目度の高い分野に強いわけではないリベラルアーツカレッジとなると、人気も全盛期ほどではありません。しかし先ほどご紹介したような名門リベラルアーツカレッジは、依然として高い人気です。

今後もリベラルアーツカレッジは注目の存在

リベラルアーツとは、学問を通じて人間としての成長も目指す理想的なコンセプト。アメリカではカレッジの人気は下火になったものの、リベラルアーツの精神が消えたわけではありません。

日本にも東京大学、ICUなど昔からリベラルアーツにのっとった教育を行う名門大学はあり、近年はとりいれる大学も増えています。お子さまの大学進学を考えたとき、アメリカ・日本の名門リベラルアーツカレッジはこれからもオススメといえそうです。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう

3分でわかる知育マガジン「Chiik!」

RECOMMEND この記事を読んだあなたにオススメ

【フィリピン・セブ島】親子留学の全てがわかるベーシックガイド

【フィリピン・セブ島】親子留学の全てがわかるベーシックガイド

親子留学先として人気が高まっているフィリピン・セブ島で、注目されている理由や費用の目安、留学プラン、おすすめの語学学校まで解説します。親子留学後、そのまま...
赤ちゃんと一緒にセブ島へ!0歳からの親子留学ガイド【取材】

赤ちゃんと一緒にセブ島へ!0歳からの親子留学ガイド【取材】

フィリピン・セブ島は日本から近く、物価がお手頃、ビーチリゾートも楽しめることから注目の留学先です。大人だけでなく子どもを伴った親子留学先としても人気急上昇...
【2020年版】シンガポールの親子留学丸わかり!かかる費用も解説!

【2020年版】シンガポールの親子留学丸わかり!かかる費用も解説!

世界トップレベルの教育水準を誇るシンガポールは、日本から近く、気軽にチャレンジできる親子留学先として近年、注目が高まっています。シンガポール親子留学のメリ...
子どもが英語ネイティブと接する機会に!ホストファミリーを体験

子どもが英語ネイティブと接する機会に!ホストファミリーを体験

外国の方とのコミュニケーションは大人になるほど怖いもの。小さいうちから克服してほしいし、視野を広げてほしい。何より楽しさを知ってほしい。日本でもできる国際...
イギリスの親子留学丸わかり!人気の都市は?かかる費用も解説!【2020年版】

イギリスの親子留学丸わかり!人気の都市は?かかる費用も解説!【2020年版】

親子留学先に迷ったら、とりあえずここを選んでも間違いはないというくらい、おすすめの留学先であるイギリス。ロンドンやオックスフォードなど、イギリス親子留学で...

WRITER

Mariko.K Mariko.K  大学卒業後、大手雑誌社広告営業、進学塾講師を経て、結婚を期に2000年よりスペイン在住。マヨルカ島にてスペイン人の夫、中学生の娘と暮らす。バレアレス州立音楽学院高等部でパイプオルガン専攻中。東京都出身。