2016年6月22日 公開

現地リポート!英国式プログラミング教育の最新事情

イギリスでは2014年9月からコンピューティングが義務教育に加えられ、700万人が学校でプログラミングを学んでいます。日本の小学校に当たるプライマリースクールでも、1年生から学んでいます。日本に先んじて義務教育化が進んでいる英国式プログラミング教育の最新事情を現地ライターがお伝えします。

プライマリースクールでは何を習うの?

イングランドとウェールズ、北アイルランドでは、キーステージという教育システムによってグレード分けがされています。日本での5〜7歳に相当するキーステージ1、そのコンピューティングというプログラミングに当たる科目では、6つのアジェンダが定められています。

• アルゴリズムとは何か、デジタル端末でどのように使われるか、また、プログラムが正確な指示のもとに動くことを理解する
• 簡単なプログラミングとデバッグ
• 簡単なプログラムの挙動を論理的に予測する
• 目標を設定し、デジタルコンテンツの作成や編成、保管、処理、改善に技術を利用する
• 学校の外でも情報技術(IT)が使われていることを理解する
• 技術を安全に使うこと、個人情報の管理、困った時にサポートを得る方法を学ぶ

さらに7〜11歳に当たるキーステージ2では、複雑なプログラミングやインターネットでのデータ収集などを、11〜14歳のキーステージ3では2つ以上のプログラミング言語を利用した問題解決などを学びます。

自宅でのプログラミング学習はBBCがサポート

イギリスの公共放送BBCではさまざまな教育番組を提供していますが、もちろんプログラミングもカバーしています。

プライマリースクール向けではキーステージに沿った番組やプログラミングを使った実験動画、楽しみながら学べるインタラクティブ教材などを用意。毎日新しいコンテンツが更新されるので、日々の自宅学習にぴったりです。

ならいごとはボランティアが主流

ロンドンなどの大都市では徐々に民間のプログラミング塾ができているようですが、全国レベルでの最大手はチャリティー団体のCodeClub。9〜11歳を対象にプログラミング講座を開いています。

小学校や図書館、市民会館などがCodeClubに登録し、ボランティアのエキスパート講師を呼んで講座を開設するという形。一方、講師向けにはオンライン講座を開いて育成にも力を入れています。

企業も注目!子どものアプリ・アワード

企業も子どもたちのプログラミングに目を向けています。「Apps For Good」では、10〜18歳の子どもたちのアプリ開発支援や表彰を行っています。今年は1,600人のエキスパートが参加。教育機関のカリキュラム支援などを通じて2万5,000人の子どもたちをサポートしています。

アワードは「持続可能なコミュニティー」や「アクセシビリティー」、「コネクテッド・コミュニティー」など、これからの社会に不可欠な 6部門。協賛には韓国のサムスン電子、ドイツのソフトウエアメーカーSAP、ロイター通信といったグローバル企業が名を連ねており、プログラミング教育への関心の高さがうかがえます。

パパママの間には戸惑いも?

政府や企業がこぞってプログラミング教育に傾く一方、親御さんの反応はさまざまです。最近の調査では、親御さんの6割がお子さんにコンピューター技術を習得してほしいと思っている反面、プログラミングができる親御さんは1割にとどまりました。このため、お子さんの学習をサポートできないのではないかという不安が生まれているようです。

また、プログラミングがどのような職業につながるかがわからないと回答したパパママは全体の3割。具体的な目標が見えにくいとお子さんを励ますことも難しいのかもしれません。

みんなで支えるプログラミング教育

このように、イギリスでは政府から企業、地元の自治体までが一体となって、子どものプログラミング教育を支えています。でも、お子さんが一番必要としているのはパパママのサポート。早い段階での情報収集はもちろんのこと、お子さんと共に学ぶ姿勢も大切かもしれませんね。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

Sakiko Sakiko  在英5年目の経済・教育ライター。東京都港区育ち。幼稚園より雙葉学園に通い、慶應義塾大学法学部に進学。大学卒業後は出版関連企業に3年従事した後、渡英。ロンドンの大学院にて出版ビジネスを学び、現在もロンドンで暮らしています。紅茶とバラの国から、お子さんの明日につながる記事をお届けします!