2017年10月7日 公開

無形世界文化遺産!メキシコ版お盆「死者の日」から学ぶこと

2017年公開(日本では2018年3月16日公開)のディズニー/ピクサー映画『リメンバー・ミー』(原題:COCO)のテーマでもある「死者の日」。映画の影響もあり、日本でもこのお祭りの名前を耳にすることが増えたのではないでしょうか?メキシコのお盆ともいえる「死者の日」の現地での祝い方をご紹介します。

死者の日とは?

via Kobby Dagan / Shutterstock.com
毎年11月1日・2日に「死者の日(Día de los Muertos)」と呼ばれるお祭りがメキシコ全土で行われます。1日は子どもの魂が、2日は大人の魂が家族のもとに戻ってくる、日本でいうところの「お盆」のようなお祭りです。

ハロウィンの時期と近いこともあり、また死者に扮した仮装をすることもあるため、混同されがちですが、別のお祭りです。ですが、後述するようにメキシコでもハロウィンを楽しむ習慣も根付いてきて、子どもたちを中心にハロウィンの仮装やお菓子をもらいに家を訪ね歩くなどのパーティーを楽しみつつ、死者の日を祝う家庭も増えています。

メキシコではプレヒスパニックの時代より「死は生の延長線上にあるのだから、恐れるのではなく、それを受け入れて生を楽しもう」という死生観があったと考えられています。そこで、死者の日には、“オフレンダ”と呼ばれる祭壇やお墓を華やかに飾りつけ、故人が好きだった食べ物や音楽と共に魂を迎えるようになりました。

家庭でも学校でも、みんなで作るオフレンダ

こちらは学校で作られたオフレンダ。タマレスやモレなどのメキシコ郷土料理をお供えしています。
via Photo by E. T.
本来ならば、死者の日は家族や親戚が集まり、オフレンダを共に飾りながら、また、墓地で一晩中ろうそくを灯しながら、親から子へ、故人の話や好きだったものなどを語り継いでいく日です。

ですが、筆者の住むメキシコシティでは居住スペースの問題もあり、なかなか昔ながらの大きなオフレンダを作り、親戚縁者が一斉に集まってお祝いをする家庭は少なくなっているようです。万国に共通する、都市部の特徴かもしれません。その代わり、保育園や幼稚園、学校でみんなでオフレンダを準備するのが定番になりつつあります。

死者の日のお供えといえば、こちらのPan de Muerto(パン・デ・ムエルト)。骨をかたどったモチーフのパン、というとおどろおどろしいですが、オレンジピールで味付けされた甘いパンです。この日は街のパン屋さんではこのパンしか売っていない、といっても過言ではないくらい山積みになります。かつてはパン・デ・ムエルトも各家庭で準備していたのだそう。
via Photo by Author

子どもたちはどう死者の日に参加する?

via Photo by C. F.
死者の日のオフレンダに欠かせないのがマリーゴールドの花。センパスチル(Cempasúchil)と呼ばれるこの花はメキシコ原産の花です。一説によると、花の色と香りで故人の魂を導くといわれています。

オフレンダに敷くセンパスチルの花びらを準備するのは子どもたちの役目と決めている家庭もあります。

via Photo by Author
筆者も子どもの通う保育園からカラベラ(派手にペイントしたガイコツ)作成を宿題として課せられ、園に通う親子全員の共同オフレンダを作成しました。

近年では、学校やマンション内で死者の日とハロウィンをミックスさせたイベントをすることも多く、親子でオフレンダを作りつつ、子どもたちはハロウィンの衣装を着てお菓子をもらいに歩くこともあります。

ハロウィンのコスプレとは違う? ガイコツの扮装の意味とは

ハロウィンと同化した催しをするとはいえ「死者の日」によく見られるガイコツメイクには、ただのコスプレではなく、ちゃんと元となるキャラクターがいます。

via Photo by Author
遺跡から多く出土していることからも、メキシコでは古くから用いられていたと考えられるガイコツデザイン。死者の日の扮装に強い影響を与えているのは1870年代から新聞の風刺画家として作品を発表していた画家、ホセ・グアダルーペ・ポサダが生み出したガイコツです。彼は富裕層を皮肉り「金持ちも貧乏人も、最後はみなガイコツ」という風刺をこめて、作品の中に多くのガイコツを登場させました。その中でも特に有名なのがガイコツの貴婦人・カトリーナで、現代のガイコツ扮装はこのキャラクターが元になっている、と言われています。

友人のガイコツ扮装。今年はメキシコシティの目抜き通り、レフォルマ通りで大人も子どももこのガイコツメイクをして大パレードを行う予定です。
via Photo by C. S.

ご先祖様を思い出しながら、家族団らんを

故人を偲びつつも、扮装も派手で明るい雰囲気なのが「いかにもメキシコらしい」といわれるこのお祭りですが、明るいだけではなく、お供え物とされている祖父母やもっと上の代から続く料理のレシピなど「家族の中での大事なこと」が受け継がれるイベントであるとも感じます。

とはいえ、「家族の絆や伝統の大切さ」などと、ことさらに大上段に構えることなく、パーティーに集い、皆で特別な料理を楽しみながら、自然に子どもたちが自分の国の伝統文化を学べるのが、この国らしい部分といえそうですね。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

Mariposa Torres Mariposa Torres  メキシコシティ在住9年目。メキシコ人の夫、娘、2匹の猫と一緒に暮らしています。現地日本語・スペイン語フリーペーパーの編集長を経て、現在は企業勤めのかたわら、フリーライター。タコスやテキーラ、太陽サンサン…でも世界でもっとも危険な国!?というメキシコのステレオタイプなイメージを変える、そんな楽しい現地レポートをお届けします。